こぶのなかのしる

観た映画のこととか、アナログゲームのこととか、色々と与太話して暮らしています

【映画】残酷で異常

久しぶりに髪を切りました

 

サッパリしたので、面白かった映画の話をしたいと思います。

 

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「残酷で異常」

誤って妻を死なせてしまい自分も命を落としてしまった男が飛ばされたのは死後の世界ではなく謎めいた不気味な更生施設のような建物。そこで行われる殺人告白グループセラピーと、妻を死なせた一連のシーンのループを繰り返させられるうちに、自分のしてきたことや事件の時に起こった出来事の、自分が知らなかった裏が解き明かされていく、という不気味で不思議で不安なループものミステリーです。

 

この舞台となる建物、見た目には普通の更生施設なんですけど、そのあまりの硬質な無機質さや、グループセラピーの講師が解像度の異様に低くて古めかしいテレビの画面越しにしか登場しないことの異様な不気味さによって、そのビジュアルでガリガリとこちらを不安定な感情で揺さぶってきます。こわい!というか、このテレビ越しの講師2人の顔がめちゃくちゃ怖い。テレビの解像度も相まってものすごく気持ち悪いんですけど、なかなかできないですよこの不気味さは…それ目的だけでも観てほしい…不安になってほしい…

根本的に「なんなのこの施設?」という正体に関する説明は一切なく、それ自体はこの物語の主軸ではないのでバッサリと切り捨てられているところはとても潔いと思います。いろいろと想像できるところはあるんですけど。

ぼくは物語の核心にあまり関与しない作品設定って触れすぎると冗長になることがあるから流すときはサクッと流しちゃってもいいなぁと思う派です。興味はあるので裏設定とかあるとそれはそれで嬉しいんですけどね。

 

感覚としては、地獄の門や三途の川といった、地獄にたどり着くまでの「篩」のようなもので、なんらかの条件を満たすことであの世、もしくはこの世に脱出することが出来るのかなとか、人を殺す罪を犯してしまった罰として永遠にこの場所に閉じ込められてるのかな、とかなかなか想像を掻き立てられて良いですね。

「死後の世界」っていうのは誰も行ったことがないので、誰でも好きなように想像できるのが面白いのです。行きたくないしね…

 

 

 

タイトルはちょっと変テコ(これは直訳をそのまま採用してしまったためらしいです)なのですが、その実態は舞台設定のギミックも有効に使われた非常にしっかりした作りのミステリーで、そしてなにより観てるだけでどんどん正気度がすり減るようなすてきなビジュアルの映画なので、全人類観てほしい…

 

 

以下ラストシーンに触れるので分けておきます

 

 

 

 

 

 

分けました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主人公と違う時代、1970年代に死んだ「我が子を殺してしまった末にその苦悩から自殺した母親」ドリスがいるのですが(おそらく作中ではっきりとは描写されていないけどセラピーの参加者は死亡した時間軸が全員てんでバラバラだと思われる)、ラスト、自分のした行いに絶望した主人公がその女性とともに彼女の過去に介入してドリスの自殺を止める(「かわりに死ぬ」という死を奪い取るような方法を取った)ことに成功し、ドリスはその更生施設から脱出し、新しい未来を手に入れることに成功します。そのかわりに主人公は席を替わるように「更生施設の一部分」かのような人間になってしまうんですけど。

 

いつか新しくセラピーに参加した死者が、同じように主人公の過去に介入して彷徨う彼を救う日が来るのかなぁと、そんなことを思うのでした。願わくば、心の改まった彼として、妻を殺さずに済む新しい未来を生きてもらえたらいいですね