こぶのなかのしる

観た映画のこととか、アナログゲームのこととか、色々と与太話して暮らしています

【映画】紙の月

最近ちょっとやり方を覚えてきたのでiPadでのおえかきが楽しくなってきました。でもおえかきしながらだと映画とか観られないのでそこがもどかしいですね。両立できるずのうがあればよかった…

 

ずのうがないので、面白かった映画の話をしたいと思います。

 

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「紙の月」(2014/10/25)

 

円満な夫婦関係と銀行員としての順調な仕事ながら、どこか満たされない生活を送っていた主人公が、ちょっとしたモノのはずみから大学生と不倫関係に堕ちてしまい、彼に貢ぐことに快感を覚えてしまう。はじめは少額だった横領だったが、不倫と豪遊の資金調達のためと良心の歯止めが効かなくなり、どんどんエスカレートして額も規模も人間性もとんでもないことになっていく…というインモラルな灰色の湿気に包まれた経済的バイオレンス・サスペンス映画です。

 

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当初は幸の薄そうでどこか儚げな主人公(しかも…宮沢りえですよ…?最高じゃないですか?)の憂鬱や焦燥になんとなく同情や共感を覚えられるかな…?という気持ちからスタートして、そうするとこの話の「横領」にも何か理由があるんだろうな…という期待はするのですが、中盤以降良心のタガがバキっと壊れて金遣いや横領、何もかもが加速して魂がドロドロに濁ってくると「あっ…これ絶対共感とかしちゃいかんやつだ」って感情が一転します。一時的にでも満たされるために、やってはならない手段に手を出してしまう、というのは分からなくはないですが…いや…わかっちゃダメだ…
そんな中で横領のしっぽをつかんでくる真面目な同僚(小林聡美は本当にこういう「強い女」がマッチしてますね)が、またこの人がほんとに怖くて、この点だけに限れば「主人公何とかバレずに逃げ切ってくれ!!」とずっとハラハラ、ヒヤヒヤするのですが、最終的には「なんか、なんとかみんな救われてほしい…みんな笑顔で暮らそうよ…」みたいな気持ちになります。ました。そして、ませんでした。
でも横領が発覚した時に机の上にまとめられた偽造文書の数が「ペラッ」でも「バサッ」でもなく「ドス!!」なので…もう同情の余地がない…横領しすぎ。この「ドス!!」は是非観てほしい…

 

「主人公が就職記念でプレゼントしたペアの腕時計をムゲに扱うかのように夫から贈られる高級腕時計」
「金遣いが荒くなってからどんどん荒れ果てていき横領基地と化した自宅のリビングルーム
「最初はお金に対して消極的だったのに一度贅沢の味を覚えてどんどん低俗な闇に堕ちていく不倫相手の大学生」
「物語のラストで映される主人公の関係者たちのあまりにも残酷なショット」

…などなど、そういう細かい所の「じっとりとした闇」の描写が執拗で人の心がなくて、観てるといい感じに心が削られていきますが、それがまた心地よいんですよね(薄暗い人間で薄暗い映画が大好きなのでなので)

 

 

派手な展開こそないものの(金遣いと横領額は派手)、じっとりとしたスリルや人間の欲望の薄暗さが味わえる素敵な作品なので、元気な時に是非このまとわりつく湿気を浴びてほしいと思います。