こぶのなかのしる

観た映画のこととか、アナログゲームのこととか、色々と与太話して暮らしています

【映画】明日への地図を探して

絶対にラーメン屋のチャーハンを食べるぞ!!って息巻いて外出したところ、狙っていたチャーハンのおいしいラーメン屋さんが定休日でした。
 
 
くやしいので面白かった映画の話をしたいと思います。
 

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「明日への地図を探して」(2021/2/12)
 
原因不明のタイムループに閉じ込められ、同じ一日を工夫しながら繰り返し生きているマークは、ある時、自分と同じようにループした同じ一日を自由に動いている女の子マーガレットと出会う。お互いの存在を認識したふたりは、その一日に隠されたさまざまな「ちいさな奇跡」を探したり、ループするのをいいことに普通じゃできないような遊びをしながら、タイムループの謎を解き明かそうとするが、この一日から脱出したいと考えているマークとこの一日にとどまっていたいと考えているマーガレットの間ですれ違いが起こり…というタイムループモノの超時空青春映画(??)です。超時空青春映画とは…??
 

まず、この作品では主人公のマークにタイムループが起こった経緯というのをあえて描写せず、冒頭でいきなり「今日一日、これから何が起こるかすべて知った上での生活や行動RTA動画」が始まります。これによって、何の説明もなくとも「主人公がすでにイヤになるほどこの一日を繰り返している」というのがわかるというとてもスマートな仕組みになっています。マークの洗練された動きとそれを追いかける超長回しの映像と、そのテンポの良さがまた気持ちいいんですよね…鳥のフンが落ちてくる瞬間に通行人の足を止めたり、車のカギを探してる人に場所を教えてあげたり、みたいな何が起こっているか知っているうえでの手助けが、彼の人柄も表していたり。好青年だ!イマイチ仲の良くない妹にはアタリが強いけど…

そしてもう一人の主人公であるマーガレットも、ほんとうにさわやかで愛らしくて、振る舞いがとてもキュートなのですよ。同じ情報だけで構成されているタイムループの世界でこんな刺激的なものに出会ってしまったら10000%恋に落ちるでしょ…むりですよ…だってかわいいもん…(個人的には金髪のソバージュがめちゃくちゃ好みの髪型なので変に補正がかかっています)
そんな2人の主人公、マークとマーガレットがとにかく素敵なキャラクターなので、この物語がうまくいってほしいなーと願わずにはいられません。主人公とヒロインの好感度が高い映画は全部良い映画なので(暴論)
そしてこの作品、主人公たちの周りの人たち、家族や友達もみんないい人たちばかりで、人間を陥れたり攻撃をしたりという悪意がない(というか、物語の構造的に悪意にあたるものを登場させる必要が全くない)ことで余分なストレスを感じないのは本当にうれしいところですよね。
 

この2人が出会ってからは「ループする一日の中で街の『小さな奇跡』を見つけて集め、地図を作る」というレクリエーションを始めるのですが、その小さな奇跡というのが
「カフェでトランプをやってるおばあちゃんがレアな役を作って大喜びする」
「道端のベンチに座ってるお兄さんの後ろにたまたま止まったトラックのペイントで天使の羽根が生えたみたいに見える」
「清掃員のおじさんが学校内のピアノでこっそり超絶技巧の演奏をしてる」
みたいな、本当にちょっとした、でも見かけたら幸せになってしまいそうな等身大のミラクルなのがいいんですよね。そんなタイムループの過ごし方、楽しすぎる… 非現実事態の中での遊びの探し方があまりにも天才


そんなふたりの日々(繰り返す一日だけど)を経て序盤からひとつずつ積み上げられた伏線やフラグ、描写が、マークからマーガレットへ視点が移り変わりながら終盤に至るまでに丁寧に回収されてひとつの結末に向かって昇華されていく、そのお話の語られ方がものすごく気持ちよくて、いわゆる「予想だにしない衝撃の結末」を迎えるようなタイプの映画ではないんですけど、一番着地してほしいイメージの所にしっかりと着地してくれる、そんなやさしい青春の物語がここにあります。
 
 
理論を詰めていくガチガチのSFではなくて、あくまでも「SF(すこしふしぎ)的な要素のある青春人間ドラマ」なので、難しくなくさっぱりとした気分になりたいときにおすすめの、とても後味の良い映画でした。
 
 
 
以下、ネタバレになることに少し言及するので分けておきます。
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

分けました。

 

この映画では、後半に視点が逆転し、このループが母親と死に別れてしまう最期の日を抜け出したくないマーガレットが作り出した永遠の世界、つまり「本当の主人公でありタイムループの主体はマーガレット」であるということが判明します(キャストクレジットもトップはマークではなくマーガレットです)
「マークがマーガレットと出会う物語」ではなくて「マーガレットのほうがマークと出会う物語」だったんですね。
 
そして、彼女がこのループを抜け出すための最後のカギが「ふたりが恋人として結ばれる」という小さな奇跡なんですけど、後半に物語の主人公ではなくなったマークが、この最後のピースによってマーガレットをタイムループから救い出すためのヒーローになる、つまりマークがなぜマーガレットのループの世界に留まったのか、という意味が生まれるこの瞬間があまりにも最高で、さっぱりと描かれてはいるんですけど、すごい鮮烈なシーンでした。
ラストでループが解けて、日付が変わった瞬間に降り出す大雨の中を走っていくシーンとか、画面作りが情緒深すぎる…
 
 
イムループの世界にマーガレットを閉じ込めた天の意思の正体が何なのか、ということは結局この作品で明かされることはないのですが「なぜこのタイムループが起こって」「どうすればそれが解決するのか」そして「どういう意味だったのか」というのがなんとなくわかれば、それで十分なんですよね…それは大して重要なことではないのです。SF(すこしふしぎ)なので…
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