こぶのなかのしる

観た映画のこととか、アナログゲームのこととか、色々と与太話して暮らしています

【映画】スーサイド・ショップ

最近Miliというバンド(音楽ユニット?)がお気に入りです。Meatball Submarineめちゃくちゃ好きです。

 

Miliが好きになったので、面白かった映画の話をしたいと思います。

 

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「スーサイド・ショップ」

国民すべてが絶望的な空気に包まれる中で法律により自殺が禁止され、罰金や違反切符が切られるようになった国(???)で、営業許可証の下で代々「自殺用品店」を営む家族。先天的に異様な楽天精神を持つ息子が生まれてしまったことから、その歯車が少しずつ狂いだしていく、というデスジョーク満載の希死念慮をミュージカル的な要素を絡めつつお届けするコメディ・カートゥーン映画です。

 

ちょっとクセがあり、どことなく陰鬱で毒々しいカートゥーンな絵柄とミュージカルの動きが、コミカルとブラックの両端をしっかりと掴まえていて、まさしくこのお話にピッタリ、です。動きも多くて単純に観てるだけでも楽しめます。

 

「自殺願望」と「雑貨屋」という本来そんなに結びつかないであろう2つの要素が生み出す「商品のおススメをしながらカジュアルに自殺を売る」という物語の基盤が最高です。

「自殺のバレンタインセール」「30%オフ」「配達に行ってくる」「自分へのプレゼント用の包装」などなど、どでかいパワーワードとパワー概念が洪水のように押し寄せてきます。こんなお店がしっかりお客さんが入って繁盛している、という描写も明るい雰囲気ながら絶望感があって素敵…SUKI…

自殺は違法行為(犯罪ではないらしい)なので、街に自殺者が転がってると警察がやってきて違反切符を切る、というのが好き。絵面がひどい

ただ、この映画でも「死」が軽く扱われるわけでは決してなく、それを幇助していることに対する家族の罪悪感や、自殺をしようとする人々の躊躇いや苦しみはしっかりと、濃く描写されています。ブラックジョーク満載ながら「死」に対してはしっかりと向き合った作品だなぁ、と思います。

 

わりとぼくも定期的に、自殺願望とまではいかないんですけどかるーめの希死念慮が頭を過ることが多いので「一度きりの人生、思い通りに死なないと!」とか「寿命が1年縮まっておめでとう!」とかのおもしろブラックだけどどこか心を突いてくる言葉がしみわたります(しみわたってる場合じゃないんですけど)

 

 

死に対して色々思う所があったり、いわゆる創作、フィクション、コンテンツでの「死」という概念に対して愛着があるような人には激しく刺さる作品だと思います。

良い映画なので全人類と全死者と全希死念慮愛好家に観てほしいですね!

 

 

以下少しネタバレなので例によって分けておきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレというか、結末のお話です

 

 

 

 

 

 

楽天家の末っ子アランによって力づくで心境に大きな変化が起こっていく家族は、彼によって徹底的に破壊されてしまったスーサイドショップにかわってクレープショップを開業し(???)、結果として今までの「生きる事の苦しみから逃れるための自殺」ではなく「生きていることでしか味わえない楽しさ」を届けることになり、一応のきれいな終着点でのハッピーエンドを迎えるのですが、決してそれだけではなくて、主人でありおとうさんのミシマが「どうしても死にたいお客さん」に対しては裏メニューとして毒入りのクレープをこっそりと用意しているんですよね(最初は騙してると思ってたんですけど、きっちり死んでました。いい意味で裏切られました…)

 

人生は生きていればもっと幸せなものである、というメインテーマの裏で、死も肯定してるというか、決して自殺願望や拭い去る事の出来ない絶望そのものも否定していない所がよかったなぁ